分野概要

地質学鉱物学分野の分科と研究内容

地質学鉱物学分野では、地球発達史のコンテクストの中で、地層や岩石、鉱物、化石といった具体的な対象物を、フィールドワークと室内実験で観察、分析することで過去の情報を読み取り、地球の歴史を解明することに重点をおいています。教育カリキュラムも、それぞれの専門分野の高度な調査・解析手法を系統的に習得できるように組まれています。
地質学鉱物学分野には、地球テクトニクス、地球惑星物質科学、地球生物圏史、宇宙地球化学の4つの分科がありますが、その内容は必ずしも固定的ではなく、2つ以上の分科にまたがる研究もあります。

地球テクトニクス分科

地球テクトニクスとは、グローバルな空間スケールと地球史的な時間スケールにおける、主に固体地球の変動現象を扱う学問分野です。この分野における研究手法は多岐に渡り、対象とする現象に応じてその組み合わせが変化します。本研究室では、放射年代・同位体化学分析と断層岩の変形解析を中心に、地球変動に関する多彩な側面を明らかにするため、世界最先端の研究・教育を展開しています。研究スタイルの特色としては、フィールド調査による観察・観測、および室内での地質試料の分析・実験を中心に据え、これらに理論・モデルを加味し、対象となる未知の変動現象の全容を実証的に解明して行くことにあります。

地球惑星物質科学分科

地球惑星物質科学分科は岩石学および鉱物学の2グループからなります。
岩石学グループでは、変成岩とマントル橄欖岩を含む火成岩を対象とします。造岩鉱物や流体包有物の分析、野外調査や理論的研究を行うことにより、プレート収束域に産する岩石中での温度・圧力・時間・変形・流体活動の関係を制約し、固体地球の壮大なダイナミクスの理解に挑んでいます。
鉱物の結晶構造や化学組成、微細組織は,鉱物の“形成過程”から“その後の熱・応力履歴”など様々な情報を記録しています。鉱物学グループでは、(1) 地球の鉱物を始めとして、「はやぶさ」が採取してきた小惑星イトカワの粒子や、宇宙塵、始原的隕石に含まれる鉱物の電子顕微鏡を用いたnmスケールの構造分析と、(2) 地球・宇宙条件での鉱物の形成・相変化・宇宙風化実験を組み合わせた研究をおこなっています。私たちは、地球・惑星の構成する最小単位である造岩鉱物の物性や成因の理解し、太陽系原材料物質の起源や進化過程を物質科学的に解明することを目指しています。

地球生物圏史分科

長い地球史の中で地球表層の環境は変動し、それに伴って生物も絶滅と進化を繰り返してきました。そのような地質時代の記録は、地表の約90%を覆っている地層・堆積物とそれに含まれる化石に残されています。地球生物圏史分科では、(1) 古生物の進化史(古生物学)、(2) 地殻の変動史(構造地質学)、(3) 地球環境の変遷史(古環境学)の解明を目指して研究を進めています。いずれの研究も野外地質調査を重視していますが、既存の試料やデータを新たな視点で見直す研究や、理論的・実験的研究も行っています。

宇宙地球化学分科

地球化学では、試料の化学組成・同位体分析を通じて、試料が形成された年代や当時の物理化学的環境を調べ、試料が経てきた地質学的イベントに関する様々な知見を引き出します。宇宙地球化学では、独自に開発を進めている超微量元素分析技術を駆使して、隕石の年代学、地球中心核の形成過程、大陸成長史、生体内での微量金属元素の代謝機構など様々な研究を進めており、46億年にわたる地球や太陽系、生命の進化を明らかにしようとしています。現在、私たちは3つの研究テーマに取り組んでいます。(1) 太陽系形成初期の年代学、(2) 地球中心核を含めた惑星金属核-マントル間での元素分配、(3) 生体金属支援機能化学(メタロミクス)です。これらの研究には、科学の進歩に必要な両輪、つまり「学際分野の開拓」と「特定分野の深化」が包括されています。